[ゲームマーケット2019春 新刊]
サークル「MirDrac」が送る、オリジナルTRPGです(A5判/204ページ)。
『銀剣のステラナイツ』で商業デビューも果たしたサークル「どらこにあん」の瀧里フユさん、冒険企画局系作品のシナリオ集からオリジナルTRPGまで創作活動の枠を広げるサークル「首塚プロダクション」の首塚首子さんのコラボレーション第二弾! そのジャンルは、まさかのスローライフ&ファンタジー物。
舞台は、人間界と魔界の狭間に位置する浮遊島「ヴィラシエル」。といっても、この世界の魔界は人類を侵略しようとはしていません。PCは、二つの世界の懸け橋となるべくヴィラシエルを開拓する一団の1人です。“スローライフ”をうたうように、PCが取り組むのは農業や牧畜、鍛冶といった生産活動が主になります。そこで使うのが、自分たちの拠点や開拓地周辺を描き出す2つの方眼紙状のシートです。
その1つ、「マイハウスシート」は、拠点周りを設定するシートです。最初のこじんまりとした拠点は、徐々に大きく拡張することが可能。また、家具やかまどを作ることで、演出的に生活環境が充実するだけでなく、特定の判定にボーナスが付くなどのゲーム的なメリットも生まれます。
ただ、PCたちが職人の技術を持っていても無から生み出すことはできません。そこで、もう1つの「フロンティアシート」を使います。このシートが、開拓する浮遊島の全体図。開拓村の他、平原、森林、川、湖を自由に書き込みます。例えば、「木こり」のスキルを持っていれば、開拓村や平原に隣接する森林のマスを選択して判定を行い、成功すれば「原木」という素材が手に入ります。これに「木材加工」や「家具作成:木材」「装飾品作成:木材」といったスキルを使うことで、開拓村や装備を豊かにしていけるわけです。
そんなスローライフな開拓生活ですが、アクシデントも付き物。ヴィラシエルはもともと未開拓の土地だけあって、天候も原住生物もスリルに満ちています。空飛ぶ猪の群れが襲来したり、雨が降らなかったり、野菜泥棒が出現したり。折角作った建物や農産物を失うのは許せません。PCたちは協力して、アクシデントに立ち向かうことになります。
このアクシデントへの対策や、前述の開拓に関する判定を行う場合、本作では6面体ダイスを使って判定を行います。そのルールは、指定の能力値分のダイスを振り、出目が4以上の個数を数えて成否を決めるとういうもの。スローライフらしく複雑な計算は必要ありません。
さらに、実は開拓団のPCはいずれも元勇者軍とあって戦闘も可能。勇者軍に入る前の生活でPCは開拓に役立つ技術も身に着けていますが、戦闘でも一角の人物ばかりなのです。開拓以外の冒険を楽しみたい時には、元勇者達らしい冒険を楽しむセッションルールも用意されています。
もう1つ、挑戦的な内容があります。「コミュニティ」ルールは、セッションのない日にもtwitterなどのSNSを使って開拓生活を進められるルール。指定のタグ付けをしてツイートすることで、1日1回、交易や開拓村の充実を図ることができます。リプライから新たな展開や、遊び仲間の発見にもつながるかも。
名うての同人サークルによる200ページ超の作品だけあって、説明しきれない魅力が満載です。慌ただしい現代世界から離れ、ほっと一息つくファンタジーフローライフを楽しんでみませんか?