[コミックマーケット92新刊]
サークル「MirDrac」が送る、オリジナルTRPGです(B5判94ページ)。
そこは、空がとけた世界──ある日を境に、空と大地は溶けあって、足元にも頭上にも蒼天が広がるという奇妙な景色が日常になりました。雲に視界を遮られて車が事故を起こすといったトラブルはあるものの、直接的な被害はなかったため、(科学者たちは大混乱だったでしょうが)人々はそんな奇妙な事態に慣れていきました。
ただ、それは異変の第一段階に過ぎなかったのです。溶けた空がひび割れて、荒唐無稽な怪物を生み出すようになりました。例えば、ナメクジのように巨大な眼球が飛び出ている四足獣。例えば、頭から巨大な脳をはみ出させた人とカエルの合いの子……「アクチャール(空を割る者)」と名付けられたそれらは人々を襲い、捕食し始めました。
この怪物たちを倒せるのは、本作のPCである現代の英雄「イルージオ」だけです。それは、アクチャールの発生によって覚醒した希少な人類。彼らはアクチャールが空を割るように空に“扉”を生み出し、魔法のように願いを具現化する力を持っており、怪物たちが現実世界で具現化する前に倒すことが可能でした。
もちろん国家は彼らを支援しました。さらにさまざまな企業がイルージオとアクチャールを研究し、イルージオの力を飛躍的に高める武装を生み出すことに成功。扉の向こうの世界で戦うイルージオの姿を中継するヒーローショーは、今や多くの人々に希望と勇気を与えています。
そんなPCの能力は主に、所属企業ごとに選べる武装と、特殊能力であるアクチュール因子の組み合わせで決まります。
セッションはシーン制。主に企業の上司からアクチャール討伐を指示される「導入フェイズ」、GMが提示するハンドアウトをシーンプレイヤーが選択して怪物の居場所などの情報を引き出していく「調査フェイズ」、標的のアクチャールと戦闘する「決戦フェイズ」、討伐後のエピソードを演出する「後日談フェイズ」から構成されています。
調査項目であるハンドアウトを主軸として調査していけばよいため、「そもそも何を情報収集したら分からない」といった事態は避けられるようになっています。とはいえ、ハンドアウトによっては、新たなハンドアウトを追加したり、シナリオに関わる重要な情報やアイテムであるプライズを得たりするため、どの順序で調査していくかには悩まされることもあるでしょう。
判定で使用するのは、6面体ダイス3~5個程度。基本となる判定では、能力や武装などで指定された数のダイスを振り、特定の出目「ブロックナンバー」以外のものが1個以上あれば成功です。このとき、ブロックナンバー以外のダイスが多いほど、より優れた成功になります。例えば調査判定ならハンドアウトごとにブロックナンバーが、戦闘ならアクチャールごとにブロックナンバーが決まっています。
また、セッションを通じて注意が必要な項目が、イルージオの力の源泉というべき「ヴィダ」。特殊能力を使ったり、戦闘でダメージを軽減したりするリソースとしても使える便利なものです。ただ、このヴィダの上昇は、イルージオ自身の存在を消費し、その寿命を縮めてしまいかねない危険なものです。現代の魔法使いというべきイルージオも万能ではなく、その戦闘は常に異形化──アクチャールへの変化というリスクをはらんでいるのです。それでもイルージオは、人類を怪物から守る英雄として戦わねばなりません。
このような個性的なヒーロー物ともいえる本作は、良質なシナリオ集を制作する首塚プロダクションと、同人オリジナルTRPGを次々と制作するサークル「どらこにあん」のフユ班(『朱の孤塔のエアゲトラム the Answerer』など)との強力タッグで生み出されました。本書を手に、新世界に至る扉を開いてみてください。
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