［コミックマーケット95 新刊］

サークル「WHITE B□X」が送る、オリジナルTRPGです（B5判156ページ）。

もともと現代から異世界へ転移するライトノベルこそありましたが、爆発的な人気になったのはサイト「小説家になろう」が登場してからでしょう。異世界転移、異世界転生、異世界召喚などのおなじみのジャンルも、多数の作者が関わることで新たな人気パターンを生み出し続けています。本作は、そんな“なろう小説”風の冒険を楽しめるTRPGルールブックです。

舞台となるのは、異世界グラステリア。神々が実在し、神代の遺跡や古代の迷宮といった未踏破の神秘があり、魔物や魔王といった脅威も待ち構えている──なじみある中世西洋風ファンタジーをベースにしながら、この世界が変わっているのは『来訪者』と呼ばれる異世界──我々の世界の文化が入り混じっていることです。

PCもまた、そんな来訪者の一人です。何らかの理由で地球からグラステリアに転生したり、いつの間にかこの世界に迷い込んでしまったり、また何かの使命や恩寵を受けて召喚されたり。こうした境遇によってPCは特殊なボーナスを獲得するほか、いわゆる“チート”というべき能力を必ず1つ獲得できます。この“なろう小説”らしいチート能力が、本作のセッションを特徴づけています。

というのも、本作のシステムは基本的に『ソード・ワールド』などを思わせるデータリッチなファンタジーTRPGになっています（シーン制のようなセッション運用ルールはありません）。この世界での境遇に加え、12種類から種族を選び、筋力・魔力・敏捷などの能力値を種族ごとに定められたダイスで決定。スキルポイントを使って、肉体的なスキルや魔法的なスキルを習得して、PCの個性を固めていきます。

となれば、敵データのバランスに配慮して、シナリオを組むところですが……先述のチートがバランスをぶっ壊します。特定の能力値が2D6倍──つまり、2～12倍（平均7倍）になるのなんて当たり前。MPが無限だったり、敵が見せた能力を取得したり、1ターン自分以外の全ての時間を止めたり、経験値の取得が倍になったり……etc.、etc.。これぞチート！という能力を前にすれば、大抵の敵もシナリオも破壊されてしまうでしょう。このアンバランスさが、タイトル通りの物語をPCに味合わせてくれます。

こうしたシステムのため、データを見ていて「おいおい、大丈夫か」と思ってしまうのですが……それは、きっとモブ感覚。「PCがチートによって、どんなふうに筋書きを変えてくれるのだろう」とドンと構えられる方なら、なろう世界の神たるGMも楽しめるはず！

なお、PCは現代社会の出身者だけでなく、異世界人として世界を変革する「開拓者」や、過去から現在に転生した遺失魔法の使い手「再臨者」などの立場も選べます。こうした境遇の人物を主人公とする小説も人気ですね！