サークル「なめくじたべぞう」が送る同人オリジナルTRPG「NOISY:CODE」は、西暦2070年という近未来、電脳化が一般化し、ありとあらゆるものがデータとして売り買いされるというドライな世界を舞台としたサイバーパンク作品です(コミックマーケット87発売)。
売り買いできるデータは、現実での購買可能なものにとどまりません。たとえば勤め先、家族や友人、恋人といった人間関係、生い立ちのような設定さえ電脳空間ではデータに過ぎないため、売り買い・交換が可能なのです。PCは作成時から「アセット」と呼ばれる換金可能なデータを持っており、これがゲーム上のリソースにもなります。
リアルであり、無情と言えるのが、データの価値は必ずしも設定の思い入れとは無縁なことでしょう。大事な家族のデータより、そこらで買えそうなものの方が高かったりするのです。もちろん、価格が付けられる以上、これらの設定を売ったり、買い戻したりすることもできます。
このドライな世界で、プレイヤーが扮するのは「ハッカー」。電脳世界においては魔法使いのような異質の存在です。
この世界では数年前、全世界規模のネットワーク破壊事件が起こり、未曾有の大混乱にさらされました。今も傷跡が癒えておらず、その後始末──「お掃除」をするのがPCの日常的な仕事になります。一方で、電脳世界におけるハッカーは恐ろしい脅威でもあるため、いかに目立たないように行動するかが、「お掃除」のコツになります。ゲーム的にはハッカーのスキルを使うほど「ステルス」というステータスが減少し、敵に狙われやすくなってしまいます。
それでも「お掃除」をするには理由があります。PCはネットワーク破壊事件で「失ったモノ」を探し求めており、「お掃除」はクラッシュしたデータの中からそれを取り戻す手段でもあるわけです。あらゆるものが交換可能な世界で、新たに買うのでなく、探し続けるもの。それはきっとPCにとって換金不可能な“何か”であることでしょう。
このように実にサイバーパンクらしい本作。変わった切り口だからこそ、新感覚のTRPGを楽しめるはず。ぜひお手に取って見てください!