[コミックマーケット96 新刊]
サークル「ニューゲームプラス」が送る、オリジナルTRPGです(B5判・104ページ)。
サークル名を見て「あれ?」と思った人も多いのではないでしょうか。2019年9月に『呪印感染』の発売を控える商業ゲームデザイナー集団が、同人にも活躍の幅を広げたのが本作です。担当デザイナーは『神我狩』でおなじみの力造先生。
そのタイトルの通り、PCはスーパーホスト、スーパーホステスといえる“ナイトバタフライ”となり、超極太客VIPを接待し、心の闇を払います。これは単なる夜の街の接待ではありません。PCはいずれも規格外の存在であり、その客もまた世界規模の影響力を持つ存在ばかり。彼らの心の闇次第では、世界の命運さえ傾きかねないのです。PCの働くナイトクラブ「不夜城」は、“世界のパワーバランスを調整する場”とさえ言われます。
セッションは、その不夜城内のみで完結します。お客を迎える「来店フェイズ」、ナイトバタフライの技量を尽くして客をもてなす「接客フェイズ」、この接客フェイズをシナリオで規定回数(退転時間)まで繰り返したら客を見送る「退店フェイズ」で、セッションは終了です。当然ですが、重要なのは「接客フェイズ」。客を酔わせ、心身共に気持ちよくさせ、VIPがシャンパンタワーを注文しなければ、心の闇は払えないのです! これ、冗談でなく。
心の闇を払うのが大目的としたら、接客フェイズの小目的が「高額商品」を客に注文させること。このため、PCはスキルである「接客術」を駆使して客を酔わせて、高額商品ごとに決められた「酩酊」のポイント達成を目指します。超極太客とはいえ、最終目的のシャンパンタワーやブランデータワーはいきなり頼んではくれないのです。まずは、安価なフルーツ盛りやドンペリなどをいくつか注文するぐらいに酔わせて心をほぐしましょう。
ただ、ターゲットは心の闇を抱えているだけあって態度もころころ変わります。憤怒や憂鬱、悲哀などの負の感情によって、その心に響くPCのタイプも変わります。そこで重要になるのが、PCデータである「スタイル」。PC作成では、外面的な「印象」と内面的な「本性」の2枠に、12種類のスタイルをそれぞれ選択します。正統派の美しさを備えた「ビューティ」をはじめ、高貴さを漂わせる「ロイヤル」、頭脳を生かす「クレバー」、はては人間ではない妖怪や機械などのキャラクターを表す「レジェンド」などなど。スタイルごとに取得できる接客術も異なるため、これらを組み合わせることで、多彩なナイトバタフライが誕生するわけです。
忘れてはならないのが、PC同士はライバルでもあるということ。店トップのホストやホステスが「No.1」と呼ばれて特別視されるように、PCもトップを巡って鎬を削っています。接客フェイズでは、PC全員が接客術を使うたび、PC同士が「交流」するシーンも用意されています。水商売モノらしいロールプレイを楽しむだけでなく、リソースも獲得できるので最大限に生かしたいところ。
ちなみに、本作は基本的にシナリオを作成する必要はありません。ターゲットとなるVIPの設定を作成すればOKなのです。まずは5種類のサンプルVIPが用意されているので、それで遊んでみてください。
また、各フェイズのシチュエーションやNPCの反応など、豊富なランダム表も用意されており、慣れないうちはロールプレイを考えなくとも表の結果を読み上げるだけで、ナイトバタフライらしい行動や反応を演出できるようになっているのも本作の魅力です。「水商売なんてピンとこない」という人も、自然とそれっぽいドラマに参加できるでしょう。
個性的な作品だけに、把握しやすいようにリプレイも収録されています。PCの1人、No.1ホストはまさかのイケメン(?)ドラム缶型ロボであるタクヤ。彼をはじめ個性的なナイトバタフライ4人が、悪役令嬢の心の闇に挑みます。ページをめくるたびツッコまずにはいられないリプレイもお楽しみあれ!