［ゲームマーケット2021秋 新刊］

サークル「空論城」が送る、『クトゥルフ神話TRPG（第7版）』のシナリオ集です（A4／84ページ）。収録シナリオは3本。表題作の1本は『クトゥルフ 2020』も必要です。

注意点の1つとして、本作は他のTRPG作品で知られるハンドアウトおよびシーン制を採用しています。ハンドアウトはPC個々の主な役割・立場をGM側が定めるもので、セッションのドラマ性を高めるアイデアの1つです。また、シーン制は、PC1人ずつにスポットライトを当てたシーンを展開しながら、セッションを進める手法です。いずれも複雑なルールを覚える必要はなく、本作中でも説明されていますので、なじみのない方でも安心して楽しむことができるでしょう。

表題作「昏き途の契約」は5人向けシナリオ。Covid-19によるパンデミックが猛威を振るう2021年ごろの現代日本を舞台としています。

異変は、コロナ禍で失業したPCが、帰省した実家の倉から奇妙な木像を見つけ出したところから始まります。時同じくして、学会の定説と異なる古文書の鑑定を依頼された教授、恋人をさらわれて世界を旅しているロシア人といった他のPCも同じ町を訪れており、それぞれの発見や因縁が、悲運の末路をたどった天皇の真実に導くことになります。異変は、PCたちに何を伝えようとしているのでしょうか。

その他、現代人であるPCの1人がクトゥルフ神話の作者であるハワード・P・ラヴクラフトに乗り移ってしまう「立ち上がれ！　ボクらのラヴクラフト」、1920年ごろのフランス領アルジェリアで再起を図るマフィアたちが異変に見舞われる「双色堕落像」を収録。いずれも作者のクトゥルフ神話にとどまらない幅広いジャンルの造詣深さを感じられる内容です。