※C90でアップデートされた最新版です

現代世界を舞台にした異能バトルTRPGといえば、様々な作品が思い浮かぶでしょうが、同人TRPG『人災派遣RPG』は、そんな異能物の中でも“世知辛さ”で頭抜けている作品です。

この世界では異能は表社会でこそ認知されていませんが、政府や裏の世界では周知の事実となっています。古くからの異能に対抗するように科学による対抗策も編み出されており、異能で好き放題できる環境ではないのです。

そうなれば人外も超人も日々の糧を得るために仕事をする必要があります。異能者には互助会も兼ねた専用の会社があるのですが、異能者が働いていても会社──所詮は人の組織です。上司の無茶ぶりや借金返済、勤め人の悲哀など、PCたちには私たちの身の回りにもある難題が降りかかってくるのは日常茶飯事。その姿には、共感（むしろ同情？）せずにはいられないでしょう。

こんな悲しくもコメディっぽい舞台設定も面白いのですが、TRPGとしても個性的な作品です。

一つは「異能があるリアルな現代世界」を再現したルール。PCは異能を使うたびに「露出値」──つまりは衆目を集めやすくなり、露出値が高まり過ぎれば会社からペナルティを受けることも。このため、異能を使うメリットと目立つリスクを天秤にかけながら任務をこなすことになります。

この他にも、手持ちの財産を表す「財産点」を使うことでセッションが有利になったり（金は天下の回り物！）、使った費用の一部は経費として会社が負担してくれたりと、現代物・ビジネス物らしいルールが多く盛り込まれています。

もう一つは多彩なキャラクター作成です。PCの武器となる異能は全23種類。一部をご紹介すると、人外の異能である「獣人」や「機械化」、また超人的な技能を表現した「武術」や「魔術」「電脳」、さらには思念が力となる「テレキネシス（念動力）」や「パイロキネシス（発火能力）」などの超能力もあります。

うち3種を組み合わせてキャラクターを作成するため、幅広いキャラクターを作成できます。例えば「体の半分を機械化した人狼侍（獣人＋機械化＋武術）」としたり、逆に異能を一つに絞って「全能力を電脳系に特化した最強のクラッカー（電脳×3）」といったキャラクターも可能です。

また、異能は単に戦闘だけでなく、交渉や情報戦、隠密行動に長けるものもあります。現代物ですから、当然力押しだけで解決しない事態にも数多く直面するでしょう。単に戦闘を強くするのでなく、PC同士のチームで総合力を高めるのが任務の成功率を高めるコツになるでしょう。

このように個性的な世界観やルールではありますが、本作はロールプレイのヒントや現代物らしい遊び方をするためのアドバイスなど、多数のコラムでサポートしています。もちろん、サンプルキャラクター4種類、敵データ19種類、シナリオ2本と、サンプルデータも充実し、遊びやすい配慮もされています。“世知辛い現代異能物”という、珍しい切り口ならではの魅力をぜひご堪能ください！

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