[コミックマーケット96 新刊]
サークル「氷雨亭」が送る、オリジナルTRPGです(A5判・124ページ)。
東京上空に異次元からの穴が空いてしまった、もう一つの現代。穴から現れたのは、人々が妖怪や悪魔、妖精と呼んだ幻想上の生き物──「暗那鬼(あんなき)」でした。それから70年、暗那鬼と人間が共生する東京──“暗都”を舞台に、生き様を貫く現代伝奇物ストーリーを楽しめる作品です。
PCの立場はさまざま。凶暴な暗那鬼を刈る「暗狩」、共生した多様な「暗那鬼」、虚実の境が曖昧になった暗都の真実を見定めようとする「灯守」など、18種類の「流儀」を組み合わせてPCを作成します。流儀は生き様であり、データ的にはクラスのようなもの。ただ、本作にはスキル的なものはありません。あるのは、流儀ごとに1つずつ決まっている「鬼札」という特殊能力だけ。この鬼札は1セッションに1回しか使えない、まさに切り札なのです。
面白いのは、鬼札がシーンによって異なる能力を発揮すること。本作のセッションは、「戦闘シーン」と、戦闘以外の演出をする「活劇シーン」から構成されており、それぞれ鬼札の効果が変わります。例えば、流儀「暗那鬼」の鬼札は、戦闘シーンでは他者が使った鬼札の効果を1つ無効化できます。一方で活劇シーンでは、自分に降りかかる攻撃や災害、事故などを1つ無効化できるのです。おおむね戦闘シーンではデータ的な効果、活劇シーンでは活用範囲の広い効果を発揮するため、どちらの効果で使うのかが悩ましいところ。
そんなPCで挑むセッションは、暗那鬼が敵になることもあれば、逆に暗那鬼を無法に狩り続ける暗狩を止めるなど、さまざまな展開が考えられます。掲載のサンプルシナリオ「暗き都に鬼が嗤いて」では、かつてPCを救うために姉が体を差し出した暗那鬼・黒鹿を巡るストーリー。伝承でよくあるように、暗那鬼には人間の代償を糧として願いを叶える「契約」という能力があります。黒鹿はこれを悪用し、次々に悪事を働いてきました。行方不明の兄を探す少女、黒鹿捜査に本腰を入れ始めた警察……バラバラの因縁がPCたちを巡り合わせ、黒鹿との対決に誘います。
ちなみに、本作の判定は10面体ダイスを振り、目標値以下の出目を出したダイスの数を数えるというもの。基本は1個ですが、活劇・浪漫・叡智・社交・神秘という能力値の多寡によって判定に使えるダイス数が増加する仕組み。ダイスの追加や判定の振り直しなどに使える便利なリソース「暗子」もあるため、鬼札を取っておきながら活躍することも難しくありません。
神秘と共生し、それ故に歪みも孕んだ暗都で、時に華麗に、時に泥臭く、時に和やかにあなたならではの生き様を貫きましょう!